永遠を焦がれるままに。A writer;美城丈二Another face綾見由宇也
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『ソープの葵』物語稿1・綾見由宇也
2009-05-01 Fri 16:31
 【再稿2007・5から】

 僕にだって翳(かざ)してくる昨日がある。
 その昨日は迷いっぱなしで遂に僕を果てさせた。
 迷いのもとは、かつての彼女、過去という代物(しろもの)。誰しもに忘れ難い、追憶のとき。僕は二十代前半。あれからもう十何年も経ってしまった。
 衒(てら)わず、いまなら僕なりに語れることもあるんじゃないか?。
 とある場所で彼女と出逢い、同棲し、籍まで入れた。なのに事はその二十代前半で終わってしまったのだ。いまでは僕も老けて、四十を目前の妻もおり子もいる、普通のサラリーマンだ。
 田舎町から、「映画監督」みたいなものに一心、成りたくて東京という都会に僕は憧憬というものを携えてやって来た。何かに一心腐乱に焦がれるあまり、恒にどこか、この背を押されているかのような衝動があった。その衝動を振り切れぬまま、もがいてもがいたその先に彼女が居た。あの頃の僕ならきっとそうとは考えつかないだろうけど・・・・・・。
 東横線沿いの映像学院、僕はその専門学校を卒業したあと、さる映像委託業者の会社へと就職した。「脚本企画部」といえば聞こえは良いだろうけど、言わば文字通りの委託されたTV、映画等、そのシノプシス、筋をひたすら書き連ねていくだけの仕事。自分でも口惜しいほどに粗筋(あらすじ)だけに没頭する毎日だった。自分で本編を実際に書けるほどの才覚も技量もコネも無かったような・・・・・・。とにかくものを書くという行為だけに、一日中、浸り付けに浸って朝焼けが立ち上る最中、自宅への道を転がるように帰っていく、そんなどこかの親父がよたよたとよろめきながら徘徊しているかのような、どうしようもない毎日の繰り返しだった。

 そんな折りだ。同僚のみーくんが、彼は名を巳広(みひろ)と言い、「おい、書くばかりが能じゃないぜ。たまには生き抜きをしようぜ。」とばかりに持ちかけて、僕らふたりは誰彼に恥じることもなく、当時、池袋の北口付近、百五十m歩んだ先、みーくん懇意の「ソ-プ楽園」のドアを引いた。そこで、僕がご指名したのが「あおい」そう、この物語のもうひとりの主人公で、僕のかつての追憶のひと、設楽葵(したらあおい)、彼女だった。

 「なんだよ。おまえ、本名もあおいって言うの。ちょっとそれ、まずいんじゃないの?」
 「なんで?、私、この名前、気にいっとるんよ。そやさかい、ここでも使っとるんよ。」
 「ふーん。そんなもんか。あんまり、そういうことに拘らないんだね。」
 「拘りなんてない。だって私は私やもん。」

 だって私は私やもん・・・・・・
 彼女の口癖でもあったその呟きの際の媚(こび)を売るかのような笑みが、未だにありありと記憶の端に残っている。怖ろしいほどに美しい女の子だった。そして出逢った頃は怖いお兄さんと同居していた。怪しい商売ばかりに手を染める習癖、そんなお兄さんのことも、僕があおいにやすやすとまたがるようになってから知ったことだけれど、

 何故、僕は、あのあおいに恋をしたのか?
 かなりその後、修羅みたいなものも覗いてしまった。
 なのにあおいに飽くまでも拘(こだわ)ってしまったのは何故なのだろう?。当時、ちっとも独り身のやるせなさなんてものは感じなかったし、毎日毎夜、やることは他にいっぱい、あったはずなのに。僕の脳裏にいま思えばずっと潜んでいた、きっと離れずじまいであったあおい。あの感覚は一体、どこから湧き上がった想いだったのだろう?

 あおいはよく言っていた。
 「寂しいねん。寂し過ぎやわ。なんか、自分でもおかしいくらいに寂しくなるときがあるんよ。けどね、そんな私をそんなときでもね、この私がどこか遠くから見ているねん。そのことに自分で気づいたんよ。あるときな、そう、気づいたんよ。そんな時、そんな時な、ほんまに私、気が狂いそうになるんよ。」
 なんでやねん、なんやねんって、私。
 そんな自分を見つめる私に歯止めかけよう思うんやけど、あかんねん。
 あの憂い、整った横顔にかけてあげられるだけの言葉を、当時の僕は持ち合わせてはいなかった。

 この物語は、随分、古臭い頃の物語です。ひとによっては目も覆いたくなるようなシ-ンも出てくるはずです。それにほんのちょっぴりエッチでもあります。けれど、僕はいまこそ、あのあおいとのことを書かねばならないと想いついたのです。何故だか知れず、僕の気持ちがそう、させるのです。ひとりよがりでも良い。慰めてあげる、いまはもう気遣いも要らない。なのに僕は、僕と彼女とのあの頃をここに記しておきたいといつの頃からか思いついたのです。いつかは死ぬまでに書かねばならないと思っていたはず。けれど、もしかしたら明日の自分はもう、違っているかも知れない。今だからこそ、書けることもあるはずだと僕は感じて。ここに全てを晒(さら)してしまいたい。そう、あの頃の僕しか知らないあおいが存在していたのだと信じて。
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この記事のコメント
こちらこそ、初めまして。
 mijyuさん、ようこそ、コメント返しが遅れ、大変、恐縮致しております。男性です(笑)。私の文章が読み易いとのことで、奇特な方もおられるのだなあ、と感じ入ってもおりますよ(笑)。僭越な物言いでしょうが、今後ともどうぞ、宜しくご指導くださいませね。不定期ながら、私なりに思いを込めて書き連ねてまいります。丈
2007-05-11 Fri 18:15 | URL | 美城丈二 #-[ 内容変更]
初めまして
初めまして。桃さんのトラコミュからやってきました。男性の方ですか?
真珠、美珠、などの名前を使っております。まださわりですが、読みました。
主人公の男性の追憶から物語は始まるのですね。
美城さんの文章、読みやすいです。ソープ嬢に恋をするのはやや不毛に感じますが、これからが楽しみです。
次が気になるような、そんな場所で一つの文章が終わっているので、読み応えもあると思います。
それでは、またきますね。

From mijyu
2007-04-29 Sun 15:54 | URL | mijyu #j2StTDr2[ 内容変更]
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