永遠を焦がれるままに。A writer;美城丈二Another face綾見由宇也
スポンサーサイト
-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | top↑
『ソープの葵』物語稿3・綾見由宇也
2009-07-19 Sun 10:49
 僕は十代の後半くらいから、見てくれとは裏腹に自身でも可笑(おか)しいと思えるほどのお酒飲みだった。ひとり、夜半に飲み始め陽の光を浴びることもよくあった。アルコール系というやつはなんでも呷(あお)り、不思議に酔ったという感覚が沸かない。いや、普通に酔っていたはずだ。何故なら夢見心地に気分が恒に高揚していたのだから。
 中学は三年の頃、受験勉強に厭(あ)きてしまったのか?、父親が飲むウイスキーを盗み飲みして以来、その味が忘れられなくなり、お小遣いを注(つ)ぎ込んでまで飲むようになった。やはりどこか意思の弱い部分がそう、させたのかも知れないといまでは想える。在京のひとになった頃はいっぱしのアル中と言って良かっただろう。とにかく酒が喉(のど)を通過すれば言いようの無いわだかまりだとか、苦痛に感じる出来事がいっときでも忘れられて、またその感覚を抱きたくて飲んでいるようなところがあった。のちに胃の腑(ふ)を焦がすという言葉を何かの本で知ったのだけれど、実際、言いえて妙という言葉かも知れないと感じたものだ。胃の中に噴き溜まっているもやもや、それはやはりこの世の中、社会であったり、世間というか、そういう大きな存在、ひととひとが交わらねばならない対面社会にあって僕は10代特有のストレスを感じ、酒で身を焦がすことによってそういう煩雑なものから逃げ込んでしまいたかったのかも知れない。いっときでも何物かも忘れられる感覚。いまでこそ、そう、思えるという回想なのだけれど・・・・・・。
 また僕は音楽というものに強烈に惹かれるものを感じてもいた。やはりあの頃によく聴いていたのは邦楽ではなく洋楽で、それはただたんにかっこつけて聴いているのでは無く、メロディの節が自分に合っているように感じていたからだ。それと日本語が音に乗ると妙に耳障りにも感じてもっぱら洋楽ばかりを聴いていた。時代を遡(さかのぼ)って市販されている楽曲、レコードを探り当てたりするとなんとも言えない愉悦(ゆえつ)感を覚え、ひとりでにやついていたりした。古里を離れる際に車の免許を取得していたから、無料で配布されている今で言うところのミニコミ紙かなんかにハッとされる情報が載っていたりすると関東から山梨くんだりまで車を駆って買いに走ったこともあった。ファン同士での売買の交流にも積極的に応募して、ある程度の大金をはたくことも後悔は無かった。とにかくどこか今振り返れば衝動的で一度在る概念を抱いてしまうと、もう、そのことばかりが頭にこびりつき、我先にと行動に移さなければ気が済まないようなところもあった。なのに異性に関してはなかなか意思を表に現せなかった。そういう、かつての自分が本当にいらいらさせるというか、腹立たしささえ感じる。

 あおいとは屈託の無い、些細な日常で起こる出来事等は遠慮無く、語り合えるようになった。けれど、何か踏み込んでいけない目に見えない一線が横たわっているようで、ときに会話の節々でそういう想いを感じて嫌な気分に陥った。好きなミュージシャンのこと、何故、上京してきたのか?僕は恒に僕のことを語ろうとしており、あおいの内面にある、その一線の先にある事柄を聞きつけるにはほど遠い状況だった。
 あおいとひとつ小部屋の中にあっても、僕は僕だけが知っている僕のことばかり、語り尽くそうとしたんじゃないか?聞いてほしいと言うよりもよほど語ってはいない静寂という空間が怖かったのかも?来る週も来る週も僕はあおいのひとりの客人として日々を費やしていた。

 そんな或る日のことだ。
 いつものようにソープ『楽園』のロビーへと階段を踏み越え、いつも通りにあおいを指名したが、あおいは不在であり、いままでそんなことが一度も無かったので怪訝(けげん)に想った。あおいからは10円玉付きの名刺を渡されたおり、その名刺の裏にあおいの2週間分のタイムスケジュールが○×で記されていたから、前もって日時と時間を予約しておけば逢えないということは無かったのに。
 携帯電話なんて無い時代。公衆電話で事前予約をしていたにも関わらず、あおいが不在。
 「あれっ!?予約を入れといたけど・・・」
 頻繁(ひんぱん)に変るバイトの店員のひとりだったろう、僕はそう、聞き返してみた。
 「あおいさんは先週からお休みみたいです」
 スケジュール表を開きながら、その青年はそう、言葉を選ぶように言った。
 「・・・・・・・・・」
 さりげなさげに僕は相槌(あいづち)を打ち、踵(きびす)を返したが、いままでに無い状況に少なからず動転していた。行けばいつでも逢える、あおい。僕の心根がその動転を自身で悟ったとき、(酒でも飲もうか?)あれほど好きな酒の味が二の次になっていたことを強く感じ取った。あおいのことで僕は占領されていたのかと、まざまざと感じた瞬間でもあった。
 ふと、不吉な予感に囚(とら)われた。
 そうしてその予感は当たっていた。
 あおいからその一週間後ぐらいだっただろう、あるメッセージが届いたのだ。

スポンサーサイト
別窓 | 物語稿『ソープの葵』 | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
『ソープの葵』物語稿2・綾見由宇也
2009-06-28 Sun 17:58
 夕暮れて陽が高層ビルへと落ちた頃、僕は駆け込むようにあおいのもとへと急ぐようになった。今では死語だろう、“光化学スモッグ”のせいで青白く見える月明かり。深夜でも僕の行き先はどうしたことか?あおいの元へと向かわせた。何かの予感があったはず。だが僕にはその暗い予感がなんであったのか?はっきりとは未だに答えられない。あおいには僕を包み込む何かが備わっていた。あおいの肌に触れるたびに僕は安らぎを感じて果てていた。そうとしか言いようがない。
 
 あおいの肌は血管が浮き出て透けるほどなめらかだった。
 僕はお尻から太股(ふともも)へと執拗に舐(な)め回した。
 舌で触れることにより、相手への嗅覚が忘れられなくなる。僕のエッチに対する、それが習癖。
 くすくすと笑い、身体をよじりのけぞるあおい。
 左太股に性感帯のひとつがあるらしく、特にそこを嘗め上げると身体を大きくよじった。
 そのときのあおいの媚声(びせい)。目尻にたたえた微苦笑がたまらなく僕を興奮させた。
 押さえつければ押さえつけるほど、ほどよい感じで膨れている乳房の隆起もよじれ、その悩ましい肢体がまた僕の欲情を殊更にかき立たせた。

 「あおい?、おまえ、なんで、こんなところで働いてるんだ?」
 無碍(むげ)で野暮、いま思えばあおいへの想いが高まるにつれ、僕はそんな問いかけを呟くようになっていた。
 「よくある質問やね……なんでやろ?」
 あおいは嫌がるそぶりも見せず、そう、返した。額に手を当てて考えるそぶりを見せる。
 「仕方が無いんよ。こうでもしなきゃやってけんもんね」
 何故、やってけんの?
 あの時、僕は後ろ背を見せたあおいに、それ以上の詮索をしようという気までは起こらなかった。
 いや、拒んでいたのだ。
 その、後ろ背が。
 いまだからこそ、そう、思えるが当時の僕にはそんな気遣いなど知る由(よし)も無かったかも?。
 けれど僕の中にはそういう場所で働く女なのだという、蔑(さげす)みが確かにあったはずなのだ。なのにだからといってまたそういう想いが僕を留めたのではけっして無い、と思える。
 違う何かを僕はあおいに感じていた?
 違ったのだ。僕の知る、ソープのあおいというイメージから反(そ)れている女としての美しさ。

 ただ、あの頃の僕らにはまだ、あおいが時折り見せた後ろ背をぎゅっと抱きしめてあげられるほどの関係とはいかず、また振り返って助けを求めるような信頼関係なんてものもなかった。
 僕は無神経で柔(やわ)な男だったが、それ以上に踏み込んでいくほどの裁量を持ち合わせてはいなかったということなんだろう。

 けれど、僕のあおいへの想いは独り寝の夜を焦がすほどにじりじりと息苦しさを増幅させていった。
 ソープの女だと認識していても、まるでそれは姿身(かたち)だけから入っていった恋、とは言い難い衝動が僕を夜毎(よごと)、襲ってくるかのようだった。

 してはいけない、恋なのだろうか!?
 募ってはならない、恋なのだろうか!?
 いつ頃からか、僕はよくそう、想うようになりあおいの夢を見はじめた。
 けっして良い、目覚めの軽い夢では無かった。
 彼女にとっては僕は一客人にしか過ぎないのだから。
 意識がそこに落ち着く度に、僕は僕に自制のこころを植えつけようとした。
 僕はどこにでもいる、普通の常識に囚われた若者でしか無かった。寒さでかじかんでいるにも関わらず、見てくれが悪いからとその着こなしにそぐわないマフラーを纏(まと)うことを拒む青年のように。僕は平凡で、さも有りがちな青年で在(あ)り過ぎた。特別であれ!!と希求し、古里を後にし、けれど僕はただ、一心不乱にものを書き募るひとりの人間にしか過ぎなかった。
 閉ざされていた。まだ、何もかも。
 僕にはあおいを包み込んであげられるだけの素養すら無いのだと、そんなことまで考えるようになっていった。
 自分の身の程をわきまえていた。あおいに踏み込んでいくことに臆病になっていたというよりもそこに行き着く過程で既に僕は臆病になっていたのかも知れない。億劫という壁をこしらえていたのかも知れない。
 僕には僕なりの殻を持ち、そこから這い出そうとしない、ある種の怖さがあった。
 焦れていた。まだ、何もかもに。そう、何ものかに。
 当時の僕は、そんな「弱さを意味無くけ嫌う」いっぱしの偽善者気取りの青年だった。
別窓 | 物語稿『ソープの葵』 | コメント:2 | トラックバック:0 | top↑
『ソープの葵』物語稿1・綾見由宇也
2009-05-01 Fri 16:31
 【再稿2007・5から】

 僕にだって翳(かざ)してくる昨日がある。
 その昨日は迷いっぱなしで遂に僕を果てさせた。
 迷いのもとは、かつての彼女、過去という代物(しろもの)。誰しもに忘れ難い、追憶のとき。僕は二十代前半。あれからもう十何年も経ってしまった。
 衒(てら)わず、いまなら僕なりに語れることもあるんじゃないか?。
 とある場所で彼女と出逢い、同棲し、籍まで入れた。なのに事はその二十代前半で終わってしまったのだ。いまでは僕も老けて、四十を目前の妻もおり子もいる、普通のサラリーマンだ。
 田舎町から、「映画監督」みたいなものに一心、成りたくて東京という都会に僕は憧憬というものを携えてやって来た。何かに一心腐乱に焦がれるあまり、恒にどこか、この背を押されているかのような衝動があった。その衝動を振り切れぬまま、もがいてもがいたその先に彼女が居た。あの頃の僕ならきっとそうとは考えつかないだろうけど・・・・・・。
 東横線沿いの映像学院、僕はその専門学校を卒業したあと、さる映像委託業者の会社へと就職した。「脚本企画部」といえば聞こえは良いだろうけど、言わば文字通りの委託されたTV、映画等、そのシノプシス、筋をひたすら書き連ねていくだけの仕事。自分でも口惜しいほどに粗筋(あらすじ)だけに没頭する毎日だった。自分で本編を実際に書けるほどの才覚も技量もコネも無かったような・・・・・・。とにかくものを書くという行為だけに、一日中、浸り付けに浸って朝焼けが立ち上る最中、自宅への道を転がるように帰っていく、そんなどこかの親父がよたよたとよろめきながら徘徊しているかのような、どうしようもない毎日の繰り返しだった。

 そんな折りだ。同僚のみーくんが、彼は名を巳広(みひろ)と言い、「おい、書くばかりが能じゃないぜ。たまには生き抜きをしようぜ。」とばかりに持ちかけて、僕らふたりは誰彼に恥じることもなく、当時、池袋の北口付近、百五十m歩んだ先、みーくん懇意の「ソ-プ楽園」のドアを引いた。そこで、僕がご指名したのが「あおい」そう、この物語のもうひとりの主人公で、僕のかつての追憶のひと、設楽葵(したらあおい)、彼女だった。

 「なんだよ。おまえ、本名もあおいって言うの。ちょっとそれ、まずいんじゃないの?」
 「なんで?、私、この名前、気にいっとるんよ。そやさかい、ここでも使っとるんよ。」
 「ふーん。そんなもんか。あんまり、そういうことに拘らないんだね。」
 「拘りなんてない。だって私は私やもん。」

 だって私は私やもん・・・・・・
 彼女の口癖でもあったその呟きの際の媚(こび)を売るかのような笑みが、未だにありありと記憶の端に残っている。怖ろしいほどに美しい女の子だった。そして出逢った頃は怖いお兄さんと同居していた。怪しい商売ばかりに手を染める習癖、そんなお兄さんのことも、僕があおいにやすやすとまたがるようになってから知ったことだけれど、

 何故、僕は、あのあおいに恋をしたのか?
 かなりその後、修羅みたいなものも覗いてしまった。
 なのにあおいに飽くまでも拘(こだわ)ってしまったのは何故なのだろう?。当時、ちっとも独り身のやるせなさなんてものは感じなかったし、毎日毎夜、やることは他にいっぱい、あったはずなのに。僕の脳裏にいま思えばずっと潜んでいた、きっと離れずじまいであったあおい。あの感覚は一体、どこから湧き上がった想いだったのだろう?

 あおいはよく言っていた。
 「寂しいねん。寂し過ぎやわ。なんか、自分でもおかしいくらいに寂しくなるときがあるんよ。けどね、そんな私をそんなときでもね、この私がどこか遠くから見ているねん。そのことに自分で気づいたんよ。あるときな、そう、気づいたんよ。そんな時、そんな時な、ほんまに私、気が狂いそうになるんよ。」
 なんでやねん、なんやねんって、私。
 そんな自分を見つめる私に歯止めかけよう思うんやけど、あかんねん。
 あの憂い、整った横顔にかけてあげられるだけの言葉を、当時の僕は持ち合わせてはいなかった。

 この物語は、随分、古臭い頃の物語です。ひとによっては目も覆いたくなるようなシ-ンも出てくるはずです。それにほんのちょっぴりエッチでもあります。けれど、僕はいまこそ、あのあおいとのことを書かねばならないと想いついたのです。何故だか知れず、僕の気持ちがそう、させるのです。ひとりよがりでも良い。慰めてあげる、いまはもう気遣いも要らない。なのに僕は、僕と彼女とのあの頃をここに記しておきたいといつの頃からか思いついたのです。いつかは死ぬまでに書かねばならないと思っていたはず。けれど、もしかしたら明日の自分はもう、違っているかも知れない。今だからこそ、書けることもあるはずだと僕は感じて。ここに全てを晒(さら)してしまいたい。そう、あの頃の僕しか知らないあおいが存在していたのだと信じて。
別窓 | 物語稿『ソープの葵』 | コメント:2 | トラックバック:0 | top↑
| 美城丈二@魂暴風;Soul storm*a dawn note |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。