永遠を焦がれるままに。A writer;美城丈二Another face綾見由宇也
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掌編稿『帰るところにあるまじや』
2007-03-10 Sat 20:42
 かあさん、とうさん、僕には随分、あなたがたが遠くに在るようで・・・未だにその想いを拭えませんよ。いま、僕の嫁がこの来るべき寒さを忍んでマフラーと防寒帽を編んでくれているのですが、柄にもなく、かあさん、あなたを想い出し、ちょっと僕は涙ぐんだりもしているのですよ。ひとは、よく言うものです。あれは遠い、追憶の影、顔すらもう朧で想い出せませぬよ、などと・・・いや、僕には未だにありありとあなたのよすがが浮かび上がり、浮かび上がり、僕には在りし日のかつてのあなたがたが、あなたのそのお姿がはっきりとその輪郭が、そう、ありなんと・・・遠くにおられるはずなのに、僕のこころに衝き刺さり、だのにもう、まるで遠い遠い日のことのように想われて。
 ひとというのは、勝手なものです。僕というやつも勝手な者、です。酒を喰らう、あなたが嫌いでした。厭で厭で、死んでしまえと何度、祈ったことか。そう、呪い殺してやりたいほど、あなたはどうしようもないのんべい、でしたね。だのに、いまはもう、そのよすがも無い。霧の朝、身に纏う風にもあなたはささやきすら、くるんでは来ない。もう、寂しい限り、です。僕はあなたがたの居る、この古里に、二度と帰るところにあるまじや、などと心して、あの「東京」という街で生きておりました」。いろいろ、ありました。はい、僕なりに、修羅を潜るようなひどい目に遭ってきましたよ。けれど、いまそんなことを嘆いたとて・・・。もう二度と帰るところにあるまじや、などとえてして一本気に想い込んでいた僕も脳内出血で倒れ、左半身不随、変わり果てたあなたを、あのベッドの上のしがないあなたを人目見た時、僕は一変にあなたがあまりにも哀れに想えて、もうもうもうもう、僕はいけないと、僕に呟いて、このかつて意味無くけ嫌って離れた故郷に戻って参りましたよ。
 病気がちで入退院ばかりを繰り返し、その入院先に泣く泣く電車に揺られ、あなた逢いたさに恒にどこか前のめりで歩んでいた、そんなへんてこりんなあの頃をよくよく想い出させる、いま、か弱きおかあさん。朝からくだ、巻いて拳骨でぼこぼこに殴られ、一回きり、摑みかかると凄まじい勢いで振り回してきた、あの頃ばかりが偲ばれる、いま、大酒飲みのおとうさん。
 ですが・・・僕には、ありがとう、としか今、そんな陳腐な言葉しか想い付かない。僕は、ほんとに幸せ、でした。あなたがたの子で良かった。願わくばあなたがたが存命のその頃に、その言葉を伝えたかった。
 かあちゃん、
 とうちゃん、
 家族という、
 かけがえの無い、
 「未練」
 というものを僕は未だに、
 引きずって生きているのですよ。
 もう、一度っきりでも良い。
 僕は、
 あなたがたに逢いたいです。
 逢いたいよ。
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別窓 | 美城丈二“あの頃を憂う、いくつかの掌編物語” | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
掌編稿『落日の岬』
2007-03-07 Wed 19:29
 一瞬間、その一帯、空気がいっぺんに押し迫ってくるかのような、落日の岬にはなんとも言い難い逼塞感が僕の胸中に漂ったのだ。眼下に見下ろして、ひんやりと背筋が這い上がってきたかのようで、あの時、僕は僕独りでは無かったことに少々安堵した記憶が、ある。仲間と岬巡りを、した。北海道の小樽の友人の案内を乞い、襟裳岬、知床岬、宗谷岬と車一台で代わる代わる運転し、走破、した。皆、うら若かったから、なけなしの金を出し合い、ひとりの者が北国を旅しようと言い出し、いいねいいねと言い合う内に、あっという間にその了見は成立し、皆でいや四人で、気がつけば東北自動車道を青森へと向かっていった。途中で名も無き地元の猟師さん達がよく入りに来ると聞いた月夜を真上に臨むかのような温泉場で、しばしの旅装を解いた。シルエットに映える、影だけの笹竹。湯の流れる音だけしか聞き取れない。青函連絡船の波止場に車を止めて、始発を待つ合間、皆、惰眠に耽った。函館五稜郭を越え、友人の母が待つ小樽へ。そこでたらふく石狩鍋なんぞを頂いて、その叔母さんが働いておられるという全国にその名、轟く有名な競走馬牧場へと駆けていった。特別に往年の名馬に跨らせてもらう。いや、実に
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踊る睡魔狂
2007-03-04 Sun 22:30
 踊らねばならない。ひとというものは。その人生というくたくたになりかねない他者の眼というものに囃(はや)し立てられて。
 嗤(わら)わねばならない。ひとというものは。おのれをくじくすべての欺瞞に苛立ちと執着から解き放たれず。あくせくし、身悶えする。
 別れねばならない。たとえ、愛しきひとさえ否定して自らの信じた地平へ。
 今日も今日とて、また陽は暮れて奴はちっとも浮かばれやしない。
 眠れぬ夜こそ、畢竟(ひっきょう)、悪だ。
 踊らねばならないと、また口惜しいほどいざなわれて、
 ひとは、その想いの数々を胸に忍ばせ、
 眠る。
 いや、眠りにつこうとして・・・。
 夜明けの朝に、奴はまた一篇の詩を編んだ。
 奴に、告ぐ。
 僕でよければ、また騒ごう。
 「そうさ、俺たちはどの路(みち)、この一生、踊らなきゃならない宿命の星に生まれついてるんじゃあないか!!」
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| 美城丈二@魂暴風;Soul storm*a dawn note |
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