永遠を焦がれるままに。A writer;美城丈二Another face綾見由宇也
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落書きの無いそら
2009-05-28 Thu 16:37
 この空を見上げていたら
 誰ひとりだって
 落書きなんか
 出来ないじゃないか

 俯いて
 ばっかりだったひとは
 澄み渡る蒼(あお)空に
 こころは要らないだろう

 煙草のけむりさえ
 蒼くなる
 いつだって
 そらは
 そうであったはずだろうに

 遠くで黙々と駆けていく
 ランニング姿の
 男のひとの後ろ背
 視界が遮(さえぎ)られ
 見えなくなる前に
 僕たちは答えを見つけねば
 ならないのか

 いまは
 せめて
 そういう僕たちとは
 おさらばしたいね

 落書きの無いそら
 何も結末が
 わからないそら

 何物にも
 委(ゆだ)ねていない
 落書きの無いそら

 僕たちは
 かつての僕たちに
 手招きされているんだろう?
 
 

 
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別窓 | 或る、ささやかなる(呟きという名の)詩篇 | コメント:0 | トラックバック:0 | top↑
『ソープの葵』物語稿1・綾見由宇也
2009-05-01 Fri 16:31
 【再稿2007・5から】

 僕にだって翳(かざ)してくる昨日がある。
 その昨日は迷いっぱなしで遂に僕を果てさせた。
 迷いのもとは、かつての彼女、過去という代物(しろもの)。誰しもに忘れ難い、追憶のとき。僕は二十代前半。あれからもう十何年も経ってしまった。
 衒(てら)わず、いまなら僕なりに語れることもあるんじゃないか?。
 とある場所で彼女と出逢い、同棲し、籍まで入れた。なのに事はその二十代前半で終わってしまったのだ。いまでは僕も老けて、四十を目前の妻もおり子もいる、普通のサラリーマンだ。
 田舎町から、「映画監督」みたいなものに一心、成りたくて東京という都会に僕は憧憬というものを携えてやって来た。何かに一心腐乱に焦がれるあまり、恒にどこか、この背を押されているかのような衝動があった。その衝動を振り切れぬまま、もがいてもがいたその先に彼女が居た。あの頃の僕ならきっとそうとは考えつかないだろうけど・・・・・・。
 東横線沿いの映像学院、僕はその専門学校を卒業したあと、さる映像委託業者の会社へと就職した。「脚本企画部」といえば聞こえは良いだろうけど、言わば文字通りの委託されたTV、映画等、そのシノプシス、筋をひたすら書き連ねていくだけの仕事。自分でも口惜しいほどに粗筋(あらすじ)だけに没頭する毎日だった。自分で本編を実際に書けるほどの才覚も技量もコネも無かったような・・・・・・。とにかくものを書くという行為だけに、一日中、浸り付けに浸って朝焼けが立ち上る最中、自宅への道を転がるように帰っていく、そんなどこかの親父がよたよたとよろめきながら徘徊しているかのような、どうしようもない毎日の繰り返しだった。

 そんな折りだ。同僚のみーくんが、彼は名を巳広(みひろ)と言い、「おい、書くばかりが能じゃないぜ。たまには生き抜きをしようぜ。」とばかりに持ちかけて、僕らふたりは誰彼に恥じることもなく、当時、池袋の北口付近、百五十m歩んだ先、みーくん懇意の「ソ-プ楽園」のドアを引いた。そこで、僕がご指名したのが「あおい」そう、この物語のもうひとりの主人公で、僕のかつての追憶のひと、設楽葵(したらあおい)、彼女だった。

 「なんだよ。おまえ、本名もあおいって言うの。ちょっとそれ、まずいんじゃないの?」
 「なんで?、私、この名前、気にいっとるんよ。そやさかい、ここでも使っとるんよ。」
 「ふーん。そんなもんか。あんまり、そういうことに拘らないんだね。」
 「拘りなんてない。だって私は私やもん。」

 だって私は私やもん・・・・・・
 彼女の口癖でもあったその呟きの際の媚(こび)を売るかのような笑みが、未だにありありと記憶の端に残っている。怖ろしいほどに美しい女の子だった。そして出逢った頃は怖いお兄さんと同居していた。怪しい商売ばかりに手を染める習癖、そんなお兄さんのことも、僕があおいにやすやすとまたがるようになってから知ったことだけれど、

 何故、僕は、あのあおいに恋をしたのか?
 かなりその後、修羅みたいなものも覗いてしまった。
 なのにあおいに飽くまでも拘(こだわ)ってしまったのは何故なのだろう?。当時、ちっとも独り身のやるせなさなんてものは感じなかったし、毎日毎夜、やることは他にいっぱい、あったはずなのに。僕の脳裏にいま思えばずっと潜んでいた、きっと離れずじまいであったあおい。あの感覚は一体、どこから湧き上がった想いだったのだろう?

 あおいはよく言っていた。
 「寂しいねん。寂し過ぎやわ。なんか、自分でもおかしいくらいに寂しくなるときがあるんよ。けどね、そんな私をそんなときでもね、この私がどこか遠くから見ているねん。そのことに自分で気づいたんよ。あるときな、そう、気づいたんよ。そんな時、そんな時な、ほんまに私、気が狂いそうになるんよ。」
 なんでやねん、なんやねんって、私。
 そんな自分を見つめる私に歯止めかけよう思うんやけど、あかんねん。
 あの憂い、整った横顔にかけてあげられるだけの言葉を、当時の僕は持ち合わせてはいなかった。

 この物語は、随分、古臭い頃の物語です。ひとによっては目も覆いたくなるようなシ-ンも出てくるはずです。それにほんのちょっぴりエッチでもあります。けれど、僕はいまこそ、あのあおいとのことを書かねばならないと想いついたのです。何故だか知れず、僕の気持ちがそう、させるのです。ひとりよがりでも良い。慰めてあげる、いまはもう気遣いも要らない。なのに僕は、僕と彼女とのあの頃をここに記しておきたいといつの頃からか思いついたのです。いつかは死ぬまでに書かねばならないと思っていたはず。けれど、もしかしたら明日の自分はもう、違っているかも知れない。今だからこそ、書けることもあるはずだと僕は感じて。ここに全てを晒(さら)してしまいたい。そう、あの頃の僕しか知らないあおいが存在していたのだと信じて。
別窓 | 物語稿『ソープの葵』 | コメント:2 | トラックバック:0 | top↑
掌編稿『東京』The first part 綾見由宇也
2009-05-01 Fri 16:17
  序
 庭先で鶯が鳴き誇っている。春、です。縁側で僕は何事かを憂えていた。高台の街路樹の満開の桜並木を潜った先、あのひとのうちはそこに在り、よくあのひとは木漏れ日の差しこむ軒で好きな唄を唄っていたっけな。あの頃がふいに僕のまなこに浮かび上がり、まるで幻影でもあるかのような錯覚を起させる。あのひとは何故にあんなに焦れていたのか?、なのに僕の顔を見るたびにちいさく微笑んでくれましたっけ。

 あの頃、僕はあのひとにつまらぬ愚痴を相当、吐いたな。あのひとはそのたんびにじっと耳を傾けて、けれどこの僕を最後にはいつも認める発言をしてくれた。そんなあのひとも風の便りで、妻と別れ子と別れ、独りに戻ったのだと聞くともなしに聞いた。「僕で良かったら、また呑みましょう。」そうしてきっと、あのギターの調べと濁声を。

 僕もいつの日にか、また再び、そう、謳うだろうか?あのひとがあの頃、あんなに焦れていたもの・・・・・世の中に対する義憤か?容易ならぬ恋沙汰か?さては自身の「いま」に対する辟易感か?、あの頃よりも世情は更に悪くなっている?、いやいや、僕はただあの頃を謳いたいだけなのさ。

 あのひとと、あの唄を。

  壱
 風鈴がちりりと奏(かな)でぬのちの夕暮れ時、ヒグラシが鳴いている。夏、です。
 僕はお風呂あがりで縁側に向かい、ひとり静かにビールを飲んでいる。寂しいもんです。なのに心は乾いており、ひどくこの風情が心地良く想えるのは何故だろう?
 と、そこへ幼馴染がやって来る。
 「ほれ・・・」
 縁側越しにつまみなどを包(くる)んだビニール袋を差し出すと、
 「よし、俺も付き合おう」
 傍らにどさりと座る。あぐらを組んで、ビールを俺にも寄こせという顔をする。まるで無遠慮、まるで粋。
 想えば僕の古くからの仲間たちはこんな奴ばかり。一番、快活そうで、実はもっとも、多分、繊細なのはこの僕だろう・・・?と僕は僕の中で舌を出す。
 
 いいもんです。友、というものは。
 横顔を見ただけで、ちゃんとそのときに都合の良い言葉を選んでかけてくる。かけられた張本人はかなたを向いたきり、なにげなさげよと煙草を吹かしていたが、その目にはちょいと光ったものがあるらしい。
 ただふたりでビールを飲み乾(ほ)す。
 いまや、ヒグラシだけがふたりの流行歌という按配(あんばい)。

 そんな静寂の気配を大抵、破るのはやはり、あのひとだ。若い頃は大手のプロダクションに在籍していたこともある、いまや市井のギター弾き、Tさん。顎鬚(あごひげ)だけを携(たずさ)えてギター片手に濁声(だみごえ)を張る。ここでは橘(たちばな)さんとしておこう。彼はおかしなひとだ。いまやかつて愛しきひとと、その子を捨て、六年ぶりに再会した僕の古里をひどく気にいって、自身の古里を離れ、この町に住み着いてしまった。「どらどらどら、唄いに来たぞ」アコースティックギターともう傍(かたわ)らには芋焼酎。定番中の定番スタイルで登場です。

 順ちゃんも来た。嫁さんのかすみさんも連れ立って。「何か、作りましょう」優しい微笑と、その名の通りの佇まい。いいもんです。いいもんだ。

 誰も何にも言わなくなる。ただひたすら酒を煽(あお)る。ただ、橘さんの唄い声だけが僕の心に靡(なび)いてくる。

 誰も僕に「どうして、そんなことに・・・」などと詮索(せんさく)などはしない。なのに、顔色だけを読んで「よし、今日は奴の家で酒盛りだ」なんだ、と連絡を取り合い、連立って歩んでくる。そんなこんなを想い感じながら、殊更(ことさら)に僕はこの胸の底でしみじみ、友とは良いもんだと深く、普段の僕の出不精ぶりを懺悔(ざんげ)してみたくなる。

 夜も更けて来た。かすみさんが、ああっと呟いた。「あれっ、いま、流れ星・・・」
ならば、にやりと顎(あご)を揺らし、橘さんがそら、唄いだした。

 ちょいちょい、と泣けてきた。ぐぐっと胸に沁(し)みてきた。見上げる夜空に今夜だけは、たとえ流れ星が見えぬとも良いのですよ。

 彼女(あいつ)が求めたものはなんだったのか?僕が求めたものは一体、なんだったのか!?
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| 美城丈二@魂暴風;Soul storm*a dawn note |
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