永遠を焦がれるままに。A writer;美城丈二Another face綾見由宇也
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『ソープの葵』物語稿2・綾見由宇也
2009-06-28 Sun 17:58
 夕暮れて陽が高層ビルへと落ちた頃、僕は駆け込むようにあおいのもとへと急ぐようになった。今では死語だろう、“光化学スモッグ”のせいで青白く見える月明かり。深夜でも僕の行き先はどうしたことか?あおいの元へと向かわせた。何かの予感があったはず。だが僕にはその暗い予感がなんであったのか?はっきりとは未だに答えられない。あおいには僕を包み込む何かが備わっていた。あおいの肌に触れるたびに僕は安らぎを感じて果てていた。そうとしか言いようがない。
 
 あおいの肌は血管が浮き出て透けるほどなめらかだった。
 僕はお尻から太股(ふともも)へと執拗に舐(な)め回した。
 舌で触れることにより、相手への嗅覚が忘れられなくなる。僕のエッチに対する、それが習癖。
 くすくすと笑い、身体をよじりのけぞるあおい。
 左太股に性感帯のひとつがあるらしく、特にそこを嘗め上げると身体を大きくよじった。
 そのときのあおいの媚声(びせい)。目尻にたたえた微苦笑がたまらなく僕を興奮させた。
 押さえつければ押さえつけるほど、ほどよい感じで膨れている乳房の隆起もよじれ、その悩ましい肢体がまた僕の欲情を殊更にかき立たせた。

 「あおい?、おまえ、なんで、こんなところで働いてるんだ?」
 無碍(むげ)で野暮、いま思えばあおいへの想いが高まるにつれ、僕はそんな問いかけを呟くようになっていた。
 「よくある質問やね……なんでやろ?」
 あおいは嫌がるそぶりも見せず、そう、返した。額に手を当てて考えるそぶりを見せる。
 「仕方が無いんよ。こうでもしなきゃやってけんもんね」
 何故、やってけんの?
 あの時、僕は後ろ背を見せたあおいに、それ以上の詮索をしようという気までは起こらなかった。
 いや、拒んでいたのだ。
 その、後ろ背が。
 いまだからこそ、そう、思えるが当時の僕にはそんな気遣いなど知る由(よし)も無かったかも?。
 けれど僕の中にはそういう場所で働く女なのだという、蔑(さげす)みが確かにあったはずなのだ。なのにだからといってまたそういう想いが僕を留めたのではけっして無い、と思える。
 違う何かを僕はあおいに感じていた?
 違ったのだ。僕の知る、ソープのあおいというイメージから反(そ)れている女としての美しさ。

 ただ、あの頃の僕らにはまだ、あおいが時折り見せた後ろ背をぎゅっと抱きしめてあげられるほどの関係とはいかず、また振り返って助けを求めるような信頼関係なんてものもなかった。
 僕は無神経で柔(やわ)な男だったが、それ以上に踏み込んでいくほどの裁量を持ち合わせてはいなかったということなんだろう。

 けれど、僕のあおいへの想いは独り寝の夜を焦がすほどにじりじりと息苦しさを増幅させていった。
 ソープの女だと認識していても、まるでそれは姿身(かたち)だけから入っていった恋、とは言い難い衝動が僕を夜毎(よごと)、襲ってくるかのようだった。

 してはいけない、恋なのだろうか!?
 募ってはならない、恋なのだろうか!?
 いつ頃からか、僕はよくそう、想うようになりあおいの夢を見はじめた。
 けっして良い、目覚めの軽い夢では無かった。
 彼女にとっては僕は一客人にしか過ぎないのだから。
 意識がそこに落ち着く度に、僕は僕に自制のこころを植えつけようとした。
 僕はどこにでもいる、普通の常識に囚われた若者でしか無かった。寒さでかじかんでいるにも関わらず、見てくれが悪いからとその着こなしにそぐわないマフラーを纏(まと)うことを拒む青年のように。僕は平凡で、さも有りがちな青年で在(あ)り過ぎた。特別であれ!!と希求し、古里を後にし、けれど僕はただ、一心不乱にものを書き募るひとりの人間にしか過ぎなかった。
 閉ざされていた。まだ、何もかも。
 僕にはあおいを包み込んであげられるだけの素養すら無いのだと、そんなことまで考えるようになっていった。
 自分の身の程をわきまえていた。あおいに踏み込んでいくことに臆病になっていたというよりもそこに行き着く過程で既に僕は臆病になっていたのかも知れない。億劫という壁をこしらえていたのかも知れない。
 僕には僕なりの殻を持ち、そこから這い出そうとしない、ある種の怖さがあった。
 焦れていた。まだ、何もかもに。そう、何ものかに。
 当時の僕は、そんな「弱さを意味無くけ嫌う」いっぱしの偽善者気取りの青年だった。
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