永遠を焦がれるままに。A writer;美城丈二Another face綾見由宇也
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『恋闇』物語稿2・美城丈二
2006-11-09 Thu 12:13
 物語稿『恋闇(こいやみ)』
  2
 遂に、というのはまぁ、それ、彼には彼なりの十代、懊悩(おうのう)のとき、というものがあっていろいろ煩瑣な出来事を潜り抜けており、不純ではないが純真ではない野望が存し、それはまだ漠然とはしていたが、将来はやはり何がしかの実業家として怠惰ではないが凡庸とした、のんびりと生きていけるくらいの余生を送りたいが為に、お金も一般人的には在り得ない額のものを得たいという、ささやかな欲望、希望、羨望。
 彼はその為に、出方はどうでも良い、まずは顔を売ろう、そうして多くの有識者、見識者に出逢い、研鑽(けんさん)を深めようと、そのタレント業に足を踏み入れた次第、ことの成り行きというものであった。
 そんな彼が、番組の一企画で、さる著名な文学者と収録を兼ねた会席の場に赴くこととあいなり、その前日、前認識とばかりに、その著作をぺらぺらと繰ってみた。彼は、無論、その著名なる文学者の名を知ってはいたが、いまのいままで一度もその物したものを拝読してはいなかった。
 ちょっと彼は弱ったなと想い、ちょうどその著作をめくっていた矢先、連絡してきた大学同窓の作家、君枝稜之介(きみえだりょうのすけ)に、その文学者の紐解いた著作に関することや、その人となりを聞いてみた。聞いてみたところ、やや気がかりになるようなことを君枝は呟いたのだ。
 「何?、文学者としてはそう、たいした作家じゃない。書いてるものは支離滅裂で、まぁ言わばさ、カルト的人気を得ているというか、一部愛好家の注目の的、というの?、あっち系のものが多いからな」
 「あっち系と言うと?」
 「ハハッ。あっち系といったら決まってる。SEXと暴力、その底に流れるコアなサゾマゾ志向。まぁ、つまらん小説の類いよ」
 「けど、次期ノーベル賞作家、最右翼なんて言われてるじゃないか?」
 「だからよ!世も末っていうかよ、厭になるんだけどな。『うたたねの燐者(りんじゃ)』『舞夢(まいゆめ)』あたりを押さえとけば問題無い作家、さ」
 「なんだって?うたたねの・・・」
 「『うたたねの燐者(りんじゃ)』『舞夢(まいゆめ)』。まぁ、出来はそこそこ、俺は全く好みじゃないが・・・。まぁ、まぁよ、だからと言って俺がそう、言ったなんて間違っても言うなよ」
 「言うわけはないが、なんだ、そのぐらいの認識でいいの?」
 「いい、いい。その二作を押さえといて・・・。まぁ、お前なら一晩で読み切る。すぐその底に流れる観念というか、価値観?いやなんだろう、感性みたいなものはすぐ判然と出来る安っぽい小説、なんだろうよ。ただよ・・・」
 「・・・ん?ただ、なんだよ?」
 「妙な噂がある」
 「妙な噂?」
 「むふふっ。それがよ・・・」
 と、そこで君枝はひとり勘考ぶって、言葉を切った。
 「なんだよ、もったいぶんなよ」
 「お前、気をつけるがいい」
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