2008年09月06日 06:30
2006年12月01日 17:05
揺れていた、影。その心だけが揺れている。
ある時、歓楽街に逃げ込まずだんまり独りっきりも飽いてきたので、神楽坂の叔母の元へと駆けてみた。
「ご在宅ですか?」案内に出た女中さんに願いでると、奥座敷からかさらさらと何か擦れる音がして、いつ見ても子気味良いほどの着こなしの叔母が現われた。どのような織物かは知れぬ。白足袋がちゃんと品を装っている。
「どうも、です」
僕は、僕らしく行儀良く、笑顔を湛えた。僕は本来、きっとそう、なのに一体、いつからこうも、作法なるものを忘れたのだろう。悲しく、なった。
「最近、どうお?そっちの方?」
叔母は変わらず世辞を言う。
「いや、教師なんて、なるもんじゃなかった」
「あら?、また、そんなことを言って・・・。らしく、ないこと」
くすくす嗤われて、僕も何か足の裏でもくすぐったいような気分に陥る。僕は幼い時分から、この叔母に育てられた。天涯孤独、というわけでもない。
「もう、日暮れ時分よ。今日くらい、上がってゆっくりしていけば?」
叔母はまた、そういう優しい呟きを漏らすが、僕はしばし、また、思案し、丁寧にお辞儀をして踵(きびす)を返した。
「また、来ます」
これまで多重人格と疑われるくらいにいろいろなものに興味、嗜好をそそられたが、いまは別に何がしたいだとか、何かを欲するだとか、まず性急さが無い。
学生の情緒を育んでやるべき立場の者が、こうなのだから、この未来も末、かな!?・・・
などと、もう想うことさえくだらない感覚を僕の中に巣くわせるのだから、僕もちょっとどうかしている。ただ、叔母に人目逢って、ほっと安心したことはやはりよほどの事実だった。
さて、このさぼり、なんて教頭に言い訳、しようかな?

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