永遠を焦がれるままに。A writer;美城丈二Another face綾見由宇也
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掌編稿『揺れている、影』第五稿
2006-12-08 Fri 18:41
 
 揺れていた、影。その心だけが揺れている。

 日暮れて明け、目覚めると僕は砂糖とマヨネーズをたっぷりと塗りこんだ食パンをほおばる。そうして一杯のスープを流し込むと、実父と実母の遺影に手を合わせる。それが、遠いかつてからの朝、起き掛けの儀式みたいなものになってしまっている。「・・・行かないとな」自分に言い聞かせるように重い腰を上げた。
 高校までは歩いていける距離に在る。後ろ背にキャッキャッと跳ねたかのような嬌声が覆い被さってくる。仲良し三人組。受け持ちの女の子達。
 「何?何?何?今日は来たんだ?」
 「またまたまたあ、さぼり教師ィー!!」
 「うるせー!!、朝一、逢ってなんだよ、おい!!おはようございますだろ!?おはようございます!!」
 「いいじゃん、いいじゃん!難(かた)いこと言わないッ」
 ひとり、輪の中でだんまりを決め込んだ女学生も、興味有りげな目を僕に注ぎ込んでくる。
 「またぁ、いい日に来たねえ。大問題発生!!」
 何がぁ!?という貌で向き直った僕に、最も派手な佇まいの女の子が、「先生、知らないでしょう!?もなみ、またまた、やっちゃった」
 また、回春かと、想わず僕は眉間に皺を寄せた。
 「もなみ、もう、無理!!先生がどんなにかばってあげても、もう無理!!」剣呑に、邪気に、無造作に、暗澹としたことを、その女の子は至極、あっさりと告げてきた。
 受け持ちの女子。万引きや隣市の青年との不純異性交遊等で補導される度に、叱咤し、なにかれと庇い続けてきた女の子であるが、またまた問題を起こしたらしい。
 こういう問題と、きっとまたこの女の子は、受け持ちのクラスの苛め問題を、そんな朝、早くから吹っかけてくる、はずだ。
 「恒星にしても立派に深刻!また学校、来てない」
 不登校学生、柳恒星などという、まったくもったいぶったかのような名を持つ、男子学生の話題も、殊更にいま、言う。
 結局、僕はこの子らに、クラスの情報源みたいなものを仕入れさせてもらっているようなわけで、何かしら、あべこべ、僕にはもうもう、手に負えない。
 昨年冬、我が高は、二年学年主任が、他校、それも中学生らを取り纏め、こともあろうに回春の、元締めみたいなことをしてしまっていたが為、散々、多くのTVマスコミに遣り込まれ、校長以下教師たちは、所謂、ちょっとした風聞にも戦々恐々、懊悩としてしまっている。わけても問題が多いとされるのが、我がクラス。もともと教師という柄では無かったし、だからこそ「持ち回り」と表す一年学年主任だなんて、「とてもとても・・・」と大迎に拒絶、した。やる気ははなから無かった。僕は一職業人としての教師でしか過ぎなかった。だから、教頭や校長に何を言われても、「いつでも僕は辞めても良い、のです」と啖呵を斬れた。
 そんな僕のささやかな救いは、ひとり娘の芽衣(めい)。芽衣は、よくメールを僕にくれる。妻と別れてのち4年。幼かったあの子もいまや中学一年生。芽衣専用の着メロは‘いつメリ’。
 放課後を、校内のベルが告げる頃、僕はその芽衣のひさかたのメールを受けた。「お久しぶり。元気、してた?」可愛い絵文字付きだった。僕はほっと吐息を漏らしつつ、さっさと校門を潜り抜けた。三十路もとうに超えた男の正体をそれら行為が暴露、していた。
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