永遠を焦がれるままに。A writer;美城丈二Another face綾見由宇也
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掌編稿『揺れている、影。』第六稿
2006-12-15 Fri 16:51
 
 揺れていた、影。その心だけが揺れている。

 何かをやりたい、やらねばならない、まだ途上、だが何を僕は成し得た!?何をこれからやろう!?
 くるくると、輪の中でかつての僕がよろめき立つ。何をすべきなのか!?、歳を重ねるごとに僕は、へたりこみ、次第にあくせくしなくなり、自身のいまに未来に興味が失せた!?
 いや、そんなことはないぞ、と幼年の頃の僕が慰(なぐさ)みの情をかけてくる。
 いまの僕には、何も無かった。実際、子供たちのことなどどうでも良かった、などと公言したら、まずいのかな!?
 聖職者としての自分に惑いが有る限り、結局、他人(ひと)は救えまい、よ・・・。
 と、そんなこんなとひとり、よがってみても、結局、今日夕、僕はあの、柳恒星のうちへと参る。また、彼は自分の殻に篭(こも)ってしまった。いや、そう、でもないような・・・、きっと、そう、だと決め付けてしまっては・・・。
 至って話せば、良い子だし、別段、そう、と想うほどのある種、変質的なときに意識の高揚を他人に見せるかのような、所謂、「きれる」性質(たち)でもない。普段は寡黙でおとなしい、子なのに。僕にはよく判らない。自分自身ですら、さして判らないと想っているものが、高校教師、それも生活指導担当教官、とは!?飽くまでも‘副’だが、
 まぁ、いい。
 「よう、恒星、久しぶり。お前、また来なくなったんだな?」
 あっさりと、恒星は自室の部屋を僕に占有、させる。ふたりっきり。ふた親はどちらも、まだ仕事から帰宅の途、ではない。
 「・・・ふふふっ。先生、また、もなみ、やっちゃったんだって?」
 「ん!?、そういうことは、うちにいても地獄耳なんだな」
 「まあね、興味が無いわけじゃない」
 「・・・そうか?」
 窓辺越しに映る、工事現場の、誘導員。
 「なあ?、タバコ吸っていいか?」
 「ああ、いいよ」
 恒星が、灰皿を差し出す。
 「それ、先生専用だから」
 「へえ?オレ専用か?」
 「まあね。先生は特別だから」
 その先は聞かない。ひとつ言えることは、この青年は、僕には何がしかを見いだしているということだろう。
 カエデの葉が左へ右へと落ちていく新興の住宅地。
 「何か、ひとつでもいい。邁進(まいしん)できるものっていうか、オレがこんなことを言ったら語弊があるのかもしれないけれどな、学校には来なくてもいいから、まあ、一身腐乱に打ち込めるものっていうのかな、そろそろ、そういうものを見つける努力をした方がいいな」
 「一身腐乱って?」
 「脇目も振らず、そのことだけを追求する姿勢っていうの?、かな?」
 「そんなものが見つけられるのかなあ?」
 「んなもん、探せばいくらでもある、ある。自分の可能性を信じて、なんでもいい、突き詰めてやればいいのさ。おまえももう、立派な男なんだから。いつまでも柔(やわ)な考えじゃあ、仕様がないぞ」
 「相変わらず、ぼそぼそと語るよね、先生は」
 「よけいなお世話、だっつうの!!」
 いつもこんな感じで、僕は恒星とふたり、おもしろおかしく、喋り昂(こう)じる。
 好きな女の子の話し、凶悪犯罪に対する抗弁、憂憤、関する心理学的話しや、昔、夢中になった偉人に纏わる話し。自分の過去もさらけ出す。いつも話題は多岐に渡る。
 彼らは立派なおとな、だ。少なくともこの僕、なんかより。十分、その小さな脳をフル稼働させていまをけなげに生きている。
 僕には目指すべき地平が、無かった。地平などという漠然とした言い方がおかしいとすれば、僕には目指すべき方向性が無かったと記した方が判りいいだろうか。彼ら彼女らには、きっと凄まじき未来がある。たとえその途上で挫けてもたとえその途上でくずおれても、まだ、取り返しがつく。残されている。そのことに、当人たちが、ふと気づけるか否か。あとでは、やはり遅い。僕は彼ら彼女らの未来の姿、ではない。‘昔は良かった’恒星の自宅から帰る道すがら、僕は電車の吊り皮にもたれつつ、そんな呟きを僕の裡(うち)で吐き出した。僕はまた僕の中に潜る。またしても答えを導けぬ、行きつ戻りつの感情、だった。
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